君色デイズ
「そしてこちらが、斎藤茂喜(さいとう しげき)さん。桐生家の執事で、1番ここでのお勤めが長いの。」
「よろしくお願いします。」
「あ、あぁ、こちらこそ。」
温和な笑みを向けられた上、まさかそんな丁寧な言葉で話し掛けられるとは思わなかった。
若干引き攣った笑みを浮かべてヨシ姉に視線を向ければ、やれやれといった表情で、また言葉を紡いでいく。
「佐知代さん、シゲさん、こんな従姉妹ですが、これからよろしくお願いします。」
「ま、前田友梨江です。わからないことだらけですが、精一杯やらせていただきますので……っ」
だからヨシ姉が言い終わった後、そう言って思い切り頭を下げた。刹那、聞こえてきた笑い声に、何事かと視線を上げる。
「ヨシちゃんが言ってた通りの子ね。」
「そうですね。……ほら2人とも、時間があるうちに昼食をとっておかないと、後で大変ですよ。」
…――ヨシ姉ったら、一体あたしのことを何て説明したんだろう。
相変わらずクスクスと楽しそうに笑う先輩方の横、ヨシ姉に促されるがまま用意された昼食を掻き込んだ。