君色デイズ

「大丈夫。もともと荷物っていう荷物はないし、部屋も大家さんとの話はついてるから。だから特に問題はないよ。」


すぐに数え切れる程度の衣服は、今度お母さんのお見舞いついでに持ってくればいい。

部屋だって、大家さんが理解のある人で助かった。今までの滞納分は、これからのあたしの給料から支払うということで納得してくれたし、すぐに引き払えるようにと手続きもしてくれた。


「それじゃあ友梨江ちゃん、準備万端でこっちに来たのね。」

「ははっ、そうですね。」


昼食の食器を片付けながら、感心したように笑ってくれた宮沢さんに笑みを返す。

そして宮沢さんの仕事をヨシ姉と替わり、厨房へと食器を下げて戻ってきた刹那、部屋にある壁時計が午後4時を告げた。


「あら、もうこんな時間。」

「ユリ、行くわよ。」

「……どこに?」


行くわよ、って、何?

宮沢さんに続いて部屋を出ていこうとするヨシ姉を引き止めてそう問えば、ヨシ姉は楽しそうに、でもめんどくさそうに、ゆっくりと口角を上げた。
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