君色デイズ

そして、淡々と言葉を紡ぎ出す。


「決まってるでしょ。景雅お坊ちゃまのお出迎えよ。」


いやいやいや、決まってはいないでしょう、さすがに。だって普通の家は、わざわざ息子を出迎えたりしないし。っていうかそもそも、使用人なんていない。


「お出迎え、って、皆で?」

「そうよ。日雇いの使用人も含め、皆で。それが日課なの。」


そんな会話を交わしている間に、人が集まる玄関口に着いた。いつの間に来ていたのか、斎藤さんの姿もすでにここにある。


「友梨江ちゃん、ヨシちゃんの横に並んでね。」

「あ、はい。」

「そして、景雅お坊ちゃまがお通りになるときは、軽く頭を下げるのよ。」

「……わかりました。」


たかが16そこらの子供に、大の大人が何人も頭を下げるなんて。信じられなかったけど、さすがに声に出すことはしなかった。仕事初日早々、クビになるのはごめんだ。

広い玄関口のホール…というか廊下。
通路の中心を空けるように、両サイドの壁際にあたし達は並ぶ。

重たげなドア越しに車が停車する音が聞こえたや否や、斎藤さんの手によってそのドアは開かれた。
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