君色デイズ
「遅くなっちゃったから、気を付けてね。」

「いやいや、すぐそこじゃないですか。」

「ふふっ。冗談よ。」


一通りの業務が終わり、佐知代さんとそんな会話を交わして屋敷を出た。夜空には大きな月と数多の星が輝いていて。夜特有のひんやりとした空気が仕事後の身体に気持ちいい。


「ん…?あれ?」


そんな中、宿舎への道をゆっくり歩いていると、広くて暗い庭園に人影が見えた。
セキュリティはしっかりしているはずだし、こんな時間に不審者が紛れ込んでるはずはないのだけれど。万が一何かあってからでは遅い。そう思って、できる限り物音を立てないように人影に近づいていく。
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