君色デイズ
『あっ! 良いこと思い出しちゃった。』
「え? 良いこと?」
このタイミングで良いことって……
一種の期待を胸に、そのままヨシ姉の言葉に耳を傾ける。
『うん、そう! あのね、私が働いてるところ、あるでしょ?そこで近いうち、また使用人を募集するらしいの。しかも、現使用人の推薦がある人のみで。』
「使用人を……」
『ええ。 だからもし、ユリにやる気があるのなら、私が推薦してあげる。使用人専用の宿舎もあってほぼ住み込みみたいな感じだから、それならユリちゃんの住む場所の件も解決するでしょ。』
住む場所があって、働ける。
最早選択の余地が無いあたしにとっては、願ってもない話だった。
けれど。
「高校中退のあたしでも、雇ってくれる……のかな?」
今までの学校での成績は、悪い方ではなかった。っていうかむしろ、どちらかと言えば上位の方に入る。
けれど事情があったからとはいえ、貧乏な上、学業を捨てたあたしを、お金持ちの主人が雇ってくれるのだろうか。