君色デイズ
そんなあたしの不安を知ってか知らずか、ヨシ姉は明るい声で答えを紡ぐ。
『うん、多分大丈夫だと思うわ。私の方で話もつけておいてあげるし。』
「本当に?」
『任せて。それじゃあ、話が付いたらまた、こっちから連絡するわね。』
「うん。……よろしくお願いします。」
金持ちの家の使用人、か……。
切れた電話を定位置に置き、あたしは小さく息を吐く。
きっと、あたしが見たことも無いような豪邸に、贅沢な調度品がたくさんあるんだろうな。そんな想像をして、今の自分自身との貧富の差がとても虚しくなった。
けれど今、あたしには仕事を選んでいる余裕はない。ようやくヨシ姉のおかげで就けそうなこの仕事に頼るしか、あたしの生きる道はないのだ。
だからこの先、どんな生活があたしを待っているかわからないけれど、とにかくがむしゃらに頑張ろう。
弱って臥している、お母さんのためにも。
あたしが、働かなければ。
【Prologue*END】