君色デイズ
◆◆◆



一通りの業務が終わり、いつものように屋敷を出た。夜空には大きな月と数多の星が輝いていて。夜特有のひんやりとした空気が頬を掠める。


「ん…?あれ?」


そんな中、宿舎への道をゆっくり歩いていると、広くて暗い庭園に人影が見えた。

あー…、なんかデジャヴなんだけど。
人影が誰であるかある程度察しをつけ、できる限り物音を立てないように近づいていく。


「…景雅様?」

「…っ!!何だ、前田か。何のようだ?」


ほら、やっぱり景雅様だった。的中した予想に、小さく息を吐く。

それにしても、この前と同じ。
ここにいる彼はやっぱり、普段彼が見せている凛とした表情とは打って変わって、儚く消えていきそうな、ひどく寂しげで哀しげな瞳をしている。
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