君色デイズ
でも。
だけど。

たくさんの人に囲まれて、大切にされて。
そんな彼がそんなことを言うなんて思ってもいなかった。

でもこれが景雅様の本当の気持ちなのだろう。
あたしたち第3者と本人が思っていること・感じていることには大きな差があるのだと、痛いほどに感じた。


「…わり。変なこと言ったかもしんね。今のは忘れろよ。」


無理して、笑わないで。

屋敷に戻っていく背中にかけたかった言葉は、発されることなく口内で霧散した。

そしてごめんなさい、景雅様。
今日のこと、あたしたぶん忘れられないよ。

“孤独だなって、思うんだ。”

慰めるにしろ励ますにしろ、何かを言うには彼のことを知らなすぎて。
凛として強く見える彼にも彼なりの悩みがあるのだとわかった。

わかったけれど、どうだろう…?
何もできない自分がもどかしくて、ちくりと胸が痛んだ。





【05*END】
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