君色デイズ
「今日はね、そう…。景雅ではなくて、あなた――前田さんに用があってよ。」

「…あたしに?」

「そうよ。」


そして、まるでにこりとでも効果音が付きそうなほどの笑顔で笑う。
その綺麗な笑顔から、なんだかとても敵意を感じた。…毎回思うけど、このお嬢様は怖い。この威圧感が嫌。


「ねぇ、前田さん。あたし、あなたに話があるの。少しだけ、ふたりで話しましょう?」


ゆっくりあたしの近くまで歩み寄り、紗彩様はあたしの顔を覗き込む。この前の一万円札の一件以来、紗彩様があたしのことを嫌っているであろうことは容易に想像できていたから、何でわざわざあたしと話しに来られるのかまったくわからなかったけれど。第一、あたしは紗彩様と話すことなんてないし。


「ね?あたしにとっては、大切な話なのよ。」


見えない圧力に、首を縦に振るしか他なかった。
…もう、大切な話って何?こんなお嬢様が、一使用人に何の話があるっていうの?
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