君色デイズ
「ふふ、ありがとう。
じゃあシゲさん、1階の客間、ちょっと借りるわね。」

「はい。ご自由にどうぞ。」

「誰にも聞かれたくないから、しばらく誰もよこさないでくれる?景雅もいないことだし、長居するつもりもないから、お気遣いは無用よ。」

「承知いたしました。」


困惑が深まるあたしをしりめに、相変わらず高飛車なお嬢様はシゲさんに偉そうな口をきき、あたしに視線をうつす。まるでついて来いとでも言わんばかりに華麗に背を向け歩き出すから、それに従った。

紗彩様に続き、広くて豪華な机とソファが置いてある客間に入る。ばたん、扉が閉まる音がやけに大きく聞こえた。


「……ねぇ、前田さん。」


扉の前に突っ立ったままのあたしに向けられる、冷たい瞳と声。その声のもとに視線を向ければ、当然のことながら、案の定ばっちりと視線は絡む。何を言われるのか、彼女の話は何なのだろうと身構えるあたしを気にすることなく、紗彩様はあっさりと本題を口にした。
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