君色デイズ
でも、そっか。
今の言葉でふと気づいた。このお嬢様はただ、本当に景雅様をお好きであるのだと。だから、きっと、嫌なんだろう。邪魔なんだろう。


「使用人の分際で、景雅の隣を歩かないで。」


文字通りこの言葉が示す意味のとおり、たかが使用人として雇われている立場のくせに、同じ屋根の下に住み、毎週ふたりで出かけるあたしの存在が。……そりゃあ、初見で嫌われもするわ。


「…ご自分の立場をわきまえなさい。景雅のこと、まさか好きだなんて言わないでしょうね?」


立場、か。
そんなの言われなくてもわかってる。
だけど同時に、否定し続けた自分の本当の気持ちにも気づいてしまった。否、これ以上もう、否定しきれずに認識してしまった。この胸の、痛みの訳も。

…――あたしは、きっと、いつの間にか景雅様を好きになっていたのだと。
紗彩様が来る前、ヨシ姉に反論してたくせに馬鹿みたい。今こんな状況で気が付くなんて。
本当に最悪だ。
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