君色デイズ
まさか逃げる気でしたなんて冗談でも言える雰囲気でもなく。


「ここで待ってるから中で着替えてこい。」

「…ハイ。」


半ば強引にフィッティングルームの中に押し込まれる。文句を言う前に、目の前でシュッとカーテンが閉められた。

あぁぁぁあ、泣きたい。
自分の行動が読まれていたことがすごく恥ずかしくて悔しかった。でもどこかで、少しだけ、あたしは嬉しく思っていたのかもしれない。

矛盾する想いに、心が揺れる。ドレスを身にまといながら、本当にこのままお姫様にでもなれたらいいのになんて、柄にもないことを思って苦笑した。

あたしはどうしなければいけないのかわからないよ。
…もう、どうにでもなれ!だなんて、開き直れたらすごく楽なのに。
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