君色デイズ
嬉しくて嬉しくてどうしようもないのに、どうしようもできなくて。

本当はあたし自身、ずっとずっと気づいてたんだと思う。“景雅様に惚れた?”なんて聞かれるたび、自分自身でもそれを感じないように、自覚しないように必死に振り払ってただけなんだ。それを紗彩様に自覚させられて、これ以上望まないように押し殺そうとしていたのに。

“あたしも好きです”

そう、伝えたかった。一緒にいるのが幸せですって、本当の気持ちを伝えたいのに。
あたしなんかじゃ、景雅様の横にいられないよ。

こみあげてくる涙をこれ以上我慢できそうになくて、あたしはドレスのまま走り出す。


「っ!前田!」


最後に一瞬みえたのは、あの日、儚く消えていきそうだった彼、そのものだった。

ごめんなさい、景雅様。
素直になれない。立場が、違いすぎるよ。





【08*END】
< 96 / 97 >

この作品をシェア

pagetop