空の竜〜リュウに選ばれし者たち〜
同時に泣きそうになって、顔をしたにむけた。


そんなわたしの頭を大ちゃんは、優しくなでてくれた。


よけいに、涙がにじむのに…。


優しいのは嬉しい。

嬉しいから悲しかった。

帰り、たくないよ…。


ずっと、こっちにいたい。


そんな言葉を、わたしは飲み込んでいた。


言ったら、大ちゃんが、悲しむ。


だって、結局
帰るんだもん。


悲しむ顔、させたくないよ…。


「純っ!」



大きな声で、大ちゃんに名前を呼ばれ


反射的に、わたしは顔を上げた。




「山にある、ゴミな。
 いつか、きれいにしたいねん。
 そんとき、手伝ってくれへん?」



大ちゃんが、照れくさそうに、わたしじゃなく
山の方を見て言った。




「て、手伝いたい!」




わたしは、ぱっと笑顔になって返事する。



大ちゃんは満面の笑顔をわたしに向けた。


トクン。


なんだか嬉しかった。




「約束な」




約束。


すごく、ワクワクしてくる。


そう



またぜったい、会える。


わたしは、やってきたタクシーに迷うことなく
乗り込んだ。






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