夜獣-Stairway to the clown-
「嫌なことでもしたんじゃないのか?」

「わざわざ嫌われるようなことすると思う?」

「それもそうか」

無意識にやったとしても謝れば済む話だし、乾もそこまでひどいような男でもないと思う。

「だからね、学校じゃ聞きにくいから家に帰って連絡を取ろうとしたんだけど繋がらなくて」

いつの間にか手にしていた携帯を強く握り締めている。

その様子を見れば、今も何度も連絡をしたのだろうと伺える。

「でも、しつこいのも嫌われるから、どうすればいいのかな?」

目には少し涙が浮かんでいる。

少し乾を殴ってやりたい気分になってくるが、いないのでどうしようもなかった。

「どうするって、探すしかないだろ」

いなくなったといえばすることはそれしかない。

本人に直接何故そうなったのかを聞けばいい。

「探すってどこを?」

「それはわかんないけど、乾の行きそうな場所をだよ」

「あー、そうか!」

夕子の顔がぱっと明るくなってきた。

そんなことに気づかない夕子はそこまで動転していたということだろうか。

今まで乾の家とかには行ったことはないのだろうか。

「何で今まで探さなかったの?」

「だって、そんな家とかに押しかけたら迷惑じゃない?」

彼女だったらそれくらいはしたほうがいいような気がしてならない。

「そんなことはないと思うが気にしすぎだ。だから、探せよ。何なら手伝ってやる」

本当は犯人が気になるところであるが、夕子を放っておくことは出来そうに無い。

「ううん、迷惑かけるの嫌だから。気にしないで」

「そうか。でもま、本当に見つからないときは頼めよ」

「うん、本当にごめん。でも、ありがとう」

そのまま教室へとかけていく。

僕も時間があれば乾を探してみようと思い教室へと向かう。

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