夜獣-Stairway to the clown-
(やっと教室か)

教室のドアをあけると、雪坂は何分も前から居るかのように自分の席に座っている。

「早いな」

時計を見ると、HRまでまだ時間がある。

他の生徒は一人もいない。

僕と雪坂だけが教室にいるということは今までになかったような気がする。

今の状況からして好都合というべきか。

自分の席にカバンを置くと椅子に座り、隣の席の雪坂に話しかける。

「今日も同じ事件が起こってしまったようだな」

雪坂はこちらをゆっくり向くけど、沈んだ顔をしている。

「その、ようです」

夕子に続いて雪坂もかと思ってしまう。

「犯人見つかったか?」

「まだです」

「そうか」

一日やそこらで犯人が見つかるわけもない。

こうも犯人が積極的なことには驚かざるをえない。

「犯人、この付近にいると思うか?」

「分かりません。今日も起こしたということは犯人には揺るがない自信というものがおありのようですね」

力と共につけた自信というのは厄介である。

どんどんと暴走してけば、止める手立てはなくなる。

「二日連続で三人ということは、能力は使い慣れてるでしょう」

「嘘だろ。覚醒して一日やそこらで自分の力を自由自在に使えるっていうのかよ!」

「天才ならば可能でしょう。犯人が元気なところを見ると紅目の制御の仕方も分かっているようです」

相手が天才となると不安しか生まれてこない。

「頭脳があるとすれば、力で立ち向かおうとすれば逆に返り討ちにあう可能性があります」

「頭脳だけで勝てると思ってるのか?」

「あなたは、知性や知識を持っている人をバカにしていません?」

「そんなことはないけど、二人いる分まだ有利だろ?」

「わかってないです。人数など関係ないんです」

言い方がどんどんと鋭くなっている。
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