夜獣-Stairway to the clown-
「親離れされたような感覚だな」

独り言をつぶやいていると、チャイムの音が鳴り響く。

立ち尽くしてる暇もなかったので、急いで教室へと向かう。

教室につくと皆木教師は壇上に立っており、HRは遅刻になってしまった。

社会人になれば1分としても遅刻は許されないと皆木教師は諭したが今の本業は学生だ。

厳しいところではあるが、納得できないわけでもないので反論せずに席についた。

皆木教師は出席をとりくだらない話をしていたが、さっきの夕子の態度が気に入らなくて話を聞く余裕すらなかった。

一時間目の授業が始まるちょっと前になると皆木教師は教室から出て行った。

ちなみに、今日から平常授業が始まる。

もう少し入学気分を味わいたいけど、学校側としてはそうもいかずスケジュール通りにこなすには二日目からでも始めなければならないらしい。

入学当初から憂鬱気分だと、この後どうなるのかという一抹の不安とは別にきっちりノートはとっておく。

黒板を見逃していては話にならないだろう。

授業が順調に進んでいくと、気づけばすでに昼休みになっており家から持ってきた弁当を机の上に広げる。

冷凍モノが多いのだが、不満があるわけでもない。

ようは食えればそれでいいというわけである。

僕が昼飯を食っていると、横から近づいてくる影があったのでそちらを向いてみると男子が一人立っている。

自己紹介をあまり聞いていない自分からしてクラスの大半の名前はまったく覚えていない。

「一緒にくわね?」

「ああ、別にいいけど」

最初から嫌がる理由もないので、断る気もなかった。

僕の横に空いていた机があったので、ソイツはそっちに座るとそいつも弁当を広げる。

「お前どこの中学?」

すごく馴れ馴れしいけど、気にしない。

「赤坂中」

「赤坂ねえ、別に悪い学校でもねえよな」

ここら付近の中学校で不良が集うような悪いところはない。

もし自分がそんな学校に通っていたらさぞ嘆いていたことだろう。
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