夜獣-Stairway to the clown-
いつか人間が直してくれるのかもしれないという希望は抱いてるのだろうか。

「しかし、何で向こうの奴らは助けにこないの?もう何年もたってるんだろ?」

「私の存在が必要とされてないからじゃないですか?」

「同じ種族だろう?助けに来るのは当たり前だろう?」

「宇宙船を作るのにも結構な時間がかかりますからね、仕方ありません」

「仕方ありませんって、寂しくないのか?」

「何でです?」

キョトンとした顔で俺の顔を見ている。

さっきまでの妖艶な笑い顔はどこへやらであった。

「今まで過ごしてきた星に帰りたいとか、仲間に会いたいとかないのか?」

「あったかもしれませんが、長い年月を得た今はその気持ち事態があるかどうかもわかりません」

「そうか」

自分ならばどうだろうと思う。

もし一人でこの星にたどり着き、直せない状況になったとしたら。

誰も知り合いもおらず、一人であたふたと困り果てていたに違いない。

「でも、五百年生きてれば色々な思い出は残ります」

「五百!?どれだけ生きてる!」

「女性に年齢を聞くのは失礼だと思います」

地球と宇宙とでは寿命の差は激しいというところなのだろう。

「それにしても、お前が話したのは僕だけなの?祖先だっていうからには他の奴にも話してるんじゃないの?」

「話しました。でも、信じる人がいなくて、無視されることがほとんどです」

(僕も無視しとけばよかったな)

自分が初めてこんなヨタ話にも付き合うほどの好奇心旺盛な部分があることに気づいた。

「今はいろんな考え方があります。神崎君のように聞いてくれる人がいるだけありがたいです」

「信じてるかは別だけど、証拠が何もないし」

「証拠ですか?」

「五百年以上生きたなんていうのも外見じゃまったくそうは見えないし、宇宙船は破棄してないし、僕の祖先だっていうのも全てが証明できるものがない。目が紅いってのだけじゃどうも信じられない」

「左様ですか」

少し考えるそぶりを見せると、誰もいない方向を見ている。
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