夜獣-Stairway to the clown-
「そんな重要なことを、僕に話してもいいのかい?」

普通に考えれば、そんな迂闊なことは安易にはしないはずだろうが。

雪坂がそんなドジなヘマをやらかすとも思えない。

「神崎さんは私を倒そうとしたり、ましてや、殺そうとしたりするんですか?」

「物騒な話だ。あるわけないよ」

「ですよね」

どこから来た自信かは知らないが、満面の笑みを浮かべている。

「ちょっと待て、宇宙人の血を引いてる奴が技を使えるってことは僕もか?」

「そうですね。宇宙人の純血の子供ならば生まれた頃より使えますが、今だと血が薄くなってますから確証はありません」

「本当に僕がお前の子孫だということが解るのか?」

「解りますよ」

「確証は?」

「同族を感じて血が騒ぎます。あなたも私の血に引かれて来たのではないのですか?」

紅い目は鋭い刃物を僕の心の中に刺すようで、背筋にゾクっという感覚が走る。

未だに雪坂の肩に置いている腕を見れば鳥肌が立っている。

事実は見たけど、理解することも納得することも出来ようがない。

何故なら、血が騒ぐなんていう感覚がどんなものなのかなんて知らない。

先ほどから凍りついたようにそこから動けなくなっている。

暗示でもかけられたような感じだった。

「自分の子孫に手を上げるような真似はしません。ただし」

「ただし?」

「私に危害を加えるようであれば、話は180度変わります」

にこっとしてるが、そこには作った笑みしかない。

やっと動けるようになったのか、雪坂の肩から手を下ろす。

春になって暖かくなっている風が頬を掠めていく。

「強い風が出てきましたね。今日はここでお開きとしましょう」

「風にあたりに来てたんじゃないのかよ」

「あなたと話してる間に、十分感じられました」
< 26 / 121 >

この作品をシェア

pagetop