夜獣-Stairway to the clown-
雪坂はベンチから立ち上がり、僕の横を通り過ぎていく。

雪坂の背中を見ていたが、公園の入り口のところで振り返る。

「明日、学校で会いましょう」

雪坂の目は紅い色から黒い色になっており、禍々しいものも感じられない。

公園の入り口には学校でよく見るリムジンが止まっている。

それに乗り込むと、どこかへと走っていった。

(わけがわからない)

時計の針は2時間ほど進んで21時になっていた。

家に帰ると、晩御飯の匂いが漂っている。

家族はすでにリビングで飯を食べている。

「帰ってくるんだったの?」

母親はTVからこちらを向き、少し驚いた顔をしている。

「お腹減ったから」

廊下からリビングに入り、いつもの席につくが飯が出てくる気配はない。

「飯は?」

「ないよ」

横からアキラが母親の代わりに優しく説明をしてくれる。

「連絡をよこさないのが悪いんだから、当然と思うけど」

僕が腹をすかせているというのに、平気で飯を口の中に入れていく。

「あー、やってらない」

ないのも当然かと思いながら、僕は席を立つ。

飯がないリビングなど、カレーにルーがのってないようなものだった。

二階へとあがって行き、自分の部屋のベッドに上に寝転がる。

(飯は食えない、変な話は聞かされる、夕子は乾といちゃついている、何だこの一日)

厄日はあるらしく、それが今日に当たったのかもしれない。

しかし、塞翁が馬ということわざがあるということで、きっと明日はいいことがあると信じたい。

ベッドでゴロゴロしていると、一つ気になったことが思い浮かぶ。

自分が雪坂の子孫だというのならば、家族も当然そうなるわけである。

(アキラ達も変な能力が使えるとか?)

まさかと思っていると、アキラがノックもせずに部屋へ入ってくる。

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