夜獣-Stairway to the clown-
「ノックしろよ」

寝転がってた姿勢を、座る姿勢に変える。

「怪しいことでもやってたの?」

「そう見えるか?」

「うん」

いつも通りの日常会話なので、そこまで重要でもないと解り用件を聞くことにした。

「何か用?」

「あんたが飯を食わないのが心配とか母さんが言うから、わざわざ持ってきたんだ」

後ろに隠していた手に持っていたのは、コンビニかどこかで買ってきたジャムパンとウィンナーパンである。

「そんなの家にあった?」

「ないよ」

「じゃあ、買ってきたの?」

「買いに行かされたの。自分の用もあったから別にいいんだけどね」

「ふーん、ありがとう」

その袋を取ろうとしたが、高らかにあげられる。

「くれるんじゃないの?」

「何で?」

「何でってそのために持ってきたんだろ?」

「ただであげるなんて生易しいこと、今の時代じゃ誰もしてくれないと思うけど」

上で袋をブランブランとさせながら、もう一つの手を差し出す。

「犬になれと?」

お手などという、恥辱的行為を実の弟にさせるのはどうかと思う。

「無駄なこと言ってないで、金」

その短く解りやすい要求に従うか従わないか迷う。

「今持ち金がないんだ、ただで頂戴」

「は?」

アキラがハンガーにかかっている制服のポケットを探りサイフを取り出す。

「おい、何してる?」

「サイフ取り出してあげてるんだけど、優しいでしょ?」

時々、言葉のとらえかたの間違えに苦労することがある
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