夜獣-Stairway to the clown-
「余計な金は取るなよ」

こうなってしまってはどうしようもない。

腕力で取り替えそうと思えばできるが、無駄な体力は使いたくない。

アキラは小銭の入ってるところをゴソゴソと探りながら、500円玉を取り出す。

「確か100円玉が4枚あったはずだが、何故それを取り出すの?」

パン2つが500円もするのなら、とんだ物価高な世の中だ。

「お・だ・ち・ん」

片目を閉じてウィンクをするものの、魅力が感じられない。

「もういいや。パン置いてってよ」

「はいはい、毎度あり」

ベッドにパンとサイフを放り投げて、部屋から出て行こうとする。

アキラが出て行く前に、一つ聞くことがあるのを思い出す。

「アキラ」

「何?」

面倒くさそうな顔をしながら、こちらを見ている。

「自分がもし人間じゃないとしたらどうする?」

アキラにも雪坂の血が流れている可能性は高い。

「何言ってんの?アホらしい質問してる暇があったら別のこと考えたら?」

僕を相手にする気は全くないようであり、用がないと解ると部屋へ戻っていった。

「それが普通の対応なんだよな」

僕だって未だに信じられない部分が多いけど、紅い目といい、音といい信じるしかない部分もある。

答えの出ないことをこれ以上考えれば、腹の減っているので筋肉を酷使しかねない。

空腹の場合、何か考えたり動いたりすれば筋肉からエネルギーを削り取るといわれているのをTVで見たことがあった。

横にあったパンを見つめていたけど、見つめていても腹はいっぱいにならないので食べる。

その後、風呂に入り、明日に備えて寝ることにした。

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