夜獣-Stairway to the clown-
玄関から出ると、雲行きが怪しくなっている。

すぐにでも雨が降りそうな雰囲気だったので、傘を持ち学校へ向かう。

登校途中で夕子とも会うことはなく、学校についてしまう。

校門にリムジンの姿も今日はなかった。

午前の傘の役割はない。

5組へと向かう途中で気になるのか、3組を覗いてしまう。

夕子のことだからいないと思ったけど、席に座って女子と語らっている。

「んなバカな」

つぶやいていると、もう一人の姿を見かけてそういうことかと納得する。

ソイツは自分の席で小説を読みふけっている。

乾龍一、アイツを見ていると、昨日の夕子の顔が思い出される。

乾が夕子の席に近づいてきた時の顔、あまり見たことはない。

頭を振ると、さっさと5組へと向かうことにした。

 

5組の人数はまばらである。

他のクラスもそうだが、HR間際でくるのが大体の人間の考えなんだろう。

雪坂の姿ももうそこにはある。

気になることがあってもここで話すことはまずいだろうと思い席に座る。

教師が来るまでまだ時間はあったが、やることはなかった。

じっとしていると、この前の昼休みに話した男子が来る。

荒川だったか、そんな名前であったような記憶がある。

「おいおい、テンション低いな」

特に話したいことがあるわけでもなさそうだった。

「何か用?」

「珍しく美人が早く来ているのに、その顔はないだろ」

美人といえば、コイツの中では雪坂しかいないだろう。

他の女子に失礼なような気がしてならない。

美人を見ただけで幸せになれるというコイツは単純なヤツだと思う。

そういえば、雪坂のことをコイツはどれだけ知っているのだろうか。

「雪坂のことどれぐらい知ってるの?」

「昨日は佐伯で今日は雪坂か。お前のお気に入りだもんな」

別にお気に入りでもないけど、気になるのは確かだ。
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