夜獣-Stairway to the clown-
口の中が切れ、血が口の中から垂れる。

「耕一、そこまでする必要ないって！あんたらも止めてよ！」

桜子ちゃんは腕を掴んでる男の服を掴んで抗議する。

「あ？うっさい」

軽くかどうかはしらないけどバチンという音が立つと、桜子ちゃんの頬は赤く染まっていた。

「イタ」

「うるさいから黙っとけ。次うるさくしたら知らないよ」

桜子ちゃんは頬を押さえながら、言われたとおりに静かにしている。

「あんな、みんな助けにこないってのは何でか解るよな？」

質問しているのだが、桜子ちゃんは答える気にはならないみたいだ。

「じゃあ、もう邪魔するの止める気になるだろ？邪魔するなら病院にいってもらうから」

僕を気遣ってかゆっくりと頷く。

「コイツももう何も言わないだろうし、いいんじゃね？」

何か言えば桜子ちゃんに危害が及ぶかもしれない。

今は寝転がっているしか出来ない。

このままでは桜子ちゃんは連れられていくだけだろう。

「んじゃいこっか」

桜子ちゃんの腕を掴むと、連れて行こうとする。

「ひ！」

桜子ちゃんの目からは涙があふれ出ており、頬を伝っている。

こんな状況だし、ましてや中学生とあれば泣きたくなるのもわかる。

その目で僕を見ている。

助けてくれという視線が僕の心を掴んでいる。

何もしないまま、終わることは嫌だという気持ちがあった。

桜子ちゃんを傷つけるから何もしないというのは自分に対しての言い訳だったのかもしれない。

自分の体が傷つく恐怖からくる言い訳だ。

そんなものは誰も欲しない、自分もいらない。

気力を振り絞り、立ち上がる。

「お前アホだろ？」

「日本語わかってないんじゃない？」

僕が立ち上がったことに気づき、何やら問いかけてくる

そんな質問はどうでもいい。

桜子ちゃんさえ救えることができるならば、この場の問題は全て解決することだ。
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