夜獣-Stairway to the clown-
相手の男達に怪我をさせたとはいえ、自分達で病院に行くことができないだろう。

このまま置いていては、明日になればどうなるかと思うとアキラに重い負担はかけたくないので病院に電話する。

電話をした後、桜子ちゃんをベンチに座らせ落ち着かせることにする。

こんな時にどんな言葉をかければいいのかはわからないが話しかける。

「深呼吸でもしよう」

そういうと、桜子ちゃんはちょっと落ち着いたのか深呼吸をゆっくりする。

「何なんだよ、あいつら」

「最近、ここらへんにガラの悪いのが出るって噂になってたんだけど、本当に出てくるとはね」

アキラが痛めたらしい拳をおさえながら、こちらに近づいてくる。

拳に目がいっていたから他の部分に目を見る余裕はなく、落ち着いた今になってよく見てみるとありないことが起きていた。

「アキラ、その目は一体どうしたんだ!?」

どこかで見た記憶のある色の目、鮮やかな紅い色。

ありえない事だったのですぐにでも解った。

「どったの?」

見えていないのか自分では気づいていないようではあった。

「なあ、お前、今疲れてないか?」

雪坂の話によれば、力を抑えていない状態で力を行使すると体に変調を来たすというものだった。

「んー、拳が痛いのはさっきからだけど、他にもなんか節々が痛いな」

動きに体がついていけてないのか、変調なのかはわからないがこれ以上この状態で力を使わすのはまずいだろう。

「とりあえず、アキラも拳とか見てもらったほうがよさそうだ」

「まあね。ひびとか入ってたらやだな。左手はまだ使い慣れてないんだよね」

なんか暢気なことをいっているので、放っておいてもいいだろう。

「落ち着いた?」

桜子ちゃんを見てみるとおさまっているようで、息も緩やかになっていた。

しかし、まだまだというのかコクリと小さく頷くだけだ。

(夕子を呼ぶか)

携帯を取り出し、夕子自宅に電話をかける。

何度かコールがなった後で、声がきこえてくる。

もちろん、家には夕子しかいないので、出てくるのは夕子だ。
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