夜獣-Stairway to the clown-
疲れたのかアキラはベンチに腰をかける。

「はあ、久々に動いた気がしたな」

アキラが大学行ってる以外で、他に行ってるところをあまり見たことがない。

それに、あの異常な速さは力を行使したということだろう。

「周りが早く見えたような気がしたけど、どうなんだろうね？」

普通なら気づくところだろうが、鈍すぎるだろう。

そろそろコイツに気づかせてやってもいいだろう。

「アキラ、鏡持ってる？」

「持ってるわけないじゃん」

軽く言いのけてしまった。

どうもここでは証明できそうもないが、口で言えばいいことだ。

「お前、目が紅いぞ」

「今日は寝不足なわけでもないんだけどな。疲れてるのかな」

「そういう意味じゃなくて、真ん中が紅いんだ」

「はあ？そんなことあるわけないじゃないの」

まったく信じてないようだが、ここは信じさせてやりたいところだ。

「こっちから見てるから事実なの。ちっとは弟の言うことも聞け」

「そんなのありえないじゃないの」

ここまでして弟の言うことを聞かないのか謎だ。

でも、そういわれても信じられない気持ちもわからないでもない。

そんなやり取りをしていると、どこからともなく救急車の到着する音が聞こえてくる。

要求していた台数が公園の前で止まり、中から何人か出てくる。

二人一組の３組がタンカーを持ってでてくると、こちらに走ってくる。

驚く様子もなく作業を進めていく。

色々と聞かれたが、そこは省いてもいいので省いておく。

アキラの拳も心配だったのでついでに乗せて言ってもらうことになった。

病院につくとすさまじいスピードで怪我人達は手術する場所へと運ばれていく。

アキラも拳を見てもらうために診察室へと歩いていく。

僕は軽い怪我だったので、診察室の前で看護婦さんに治療をしてもらうだけで終わった。

それから待つこと３０分程度で、アキラが診察室から出てくる。

うな垂れた様子で隣に座る。
< 51 / 121 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop