夜獣-Stairway to the clown-
帰り道でも騒がしいアキラを落ち着かせながらも歩いていく。

「これどうやったら治るの?知ってるんでしょ?」

「質問は一個ずつでお願いしたいところだ」

頭を抱える姉の焦りようは目障りな部分もあるが、本気で心配になってくる。

こうなった以上、紅目のことを知る唯一の人物に頼むしかない。

「明日も大学春休みだろ?」

「まあね」

「直す方法を知っている奴が学校にいるから、連れてきてあげる」

「本当?本当の本当!?」

急に目がキラついてくる。

「アキラがこんなに焦ってるのに、ウソついてどうするの」

「だって、こんなことって誰に言えばいいのか解らないしさ。やっぱ持つべきものは弟だね」

両腕を掴み、上下にブンブンと振りまくる。

力を行使しているのか、物凄く早い勢いで腕が千切れるんじゃないかと思うくらいだった。

家につくと、見知った靴があったので両親達はすでに帰っているようだった。

高校生になってしまえば、外出のことをとやかく言わない。

大学生であるアキラにも何ら言うことはない。

いわば、責任のある行動をすればほとんど自由なのである。

「ご飯、出来てるわよ」

母親がリビングから顔を出して、お知らせしてくれる。

アキラのことを見ても、驚く様子もない。

「母さん驚かないの?」

「何に?」

「目が紅いんだよ?」

「こわ可愛いわね。それより、ご飯冷めちゃうから片付けちゃってよ」

無関心なのか、気にしないようにしてるのか、ご飯のほうが大切なのかは解らないが、こっちにしては好都合である。
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