夜獣-Stairway to the clown-
そこに向かって、今までにない速さで走っていく。

時間に余裕があるらしく、色んな生徒が学校に歩いていくのがわかる。

回りに合わせてもいられない。

生徒が見えたということは目的地は近くで、ものの数分で到着する。

学校前にはいつものごとくリムジンが止まっていた。

アイツが学校に来ている確証がある。

上靴に履き替えることすら忘れて1年5組に走る。

廊下に教師がおり、何か言われそうになったけどかまっていられない。

5組につけばアイツの姿を探す、すぐ探す、最速で探す。

急がなくても、いる場所といえば一つしかなかった。

「雪坂!」

大声を出してしまい、みんなの視線がこちらを向いている。

その中には雪坂や荒川の視線まで混じっている。

「はい?」

雪坂の声と共に雪坂の席まで歩いていく。

「頼みたいことがあるんだ」

「何でしょう?」

不思議そうな顔をしている。

そんな顔になるのもわかる。

大声で呼ばれたあげく頼みごとをされ、あまり教室でも話しかけられたこともないのだから当然だ。

「ちょっと来てもらいたいところがあるんだ」

「どこへ行くのでしょう?」

「ごめん!説明は後でするから!」

腕を掴みなりふりかまわずに教室から出て行く。

「え?え?」

雪坂の戸惑った声は僕には届かない。

教室にいた人たちは唖然としていたり驚いたりしていた。

廊下を走っていき、前には夕子の姿があった。

「よ!またな!」

挨拶を済ませると、その横を駆け抜けていく。

夕子の驚いた顔が見えたけど、じっくり説明している場合じゃない。
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