夜獣-Stairway to the clown-
「目の奥の暗闇に紅い太い線なのが浮かんでいると思います」

アキラは黙っているけど、言われていることが当たっているらしく驚いてる。

「意識で線を少しずつ細く出来ます。唐突に細くすると心臓の動きが止まります」

太い線というのは命綱のようなものか。

強く引っ張れば切れて、谷底に落ちてしまうって感じなのだろうか

「髪のように細くなったところで線を消してください。安定しながらすれば問題はないです」

それから数秒経ったところで、アキラが目を開ける。

力が安定したらしく、目は人間の黒い色をしていた。

だけど、疲労の色は未だにぬぐえず苦しそうである。

「治ったのになんで?」

これ以上なにをしろというのか。

雪坂はもう一つ必要なものがあるといっていた。

「理由は物質を消費が激しいところです」

「もう一つ必要なものがあるっていってたな」

「刃物を貸してくれませんか?できれば清潔なものがいいです」

「そんなものどうする?」

「それがなければ解決はできません」

「解った」

言われたとおり、一回も使っていないカッターナイフを自分の部屋から持ってくる。

アキラの部屋に戻り、雪坂にカッターを渡す。

無言でそれを受け取ると刃をカチカチと伸ばし、手のひらに刃を向ける

「何やってるの!」

スっと引くと手のひらが簡単に切れ、血が流れ始める。

「何してる!」

雪坂からカッターを奪い取る。

力が入ってなかったから必要はないのだろう。

「これを飲んでください」

切れた手のひらをアキラの口元までもっていき、ポトポトとたらす。

アキラは少し戸惑った顔になったけど、治らないというのなら従うしかない。

そのまま血を口に含んでいき、のどをならして飲んでいく。

数秒経ち、適量を飲ませたのか雪坂は手を引いた。
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