夜獣-Stairway to the clown-
桜子ちゃんはまだ元気はないけど出てきてくれたところを見ると、時間はかかるけど学校に復帰してくれることだろう。

佐伯邸から出てくると、時間はまだ13時の昼過ぎである。

学校は昼休みも半ばに入ったところかな。

家に帰ったところで特にやることはない。

アキラの様子を見るなんていっても、二回も勝手に部屋に入ればどうなることかわからない。

最近は家と学校の往復で、他の場所に行ってなかったので商店街に行くのもいいかもしれない。

商店街までざっと歩いて15分はかかる。

15分といえど足も遠のくというものだ。

日が落ちるまでは時間があるからのんびり行くことにした。

見慣れた風景を見ながら、商店街へとたどり着く。

足が遠のいていたけど商店街全体が立て替えられるわけでもなく、前に来た時と同じ風景がそこにある。

来てなかったせいか歩いていると懐かしいと思える。

中三の冬から商店街にきていない。

軒並みの店を見ながら、いいものはないかと探りを入れてみる。

物欲がないのか金を使うことがないので、財布の中にはそこそこ入っている。

観察している中で一軒の店が目に留まった。

ネックレスやらブローチやらを扱ってるらしく、ガラスのケースの向こうにそれらが飾られている。

センスよく並べられており、目が惹き付けられるのも頷ける。

値段を見ればそこそこするけど、買えないくらい高いわけでもなかった。

夕子にでもプレゼントとして買って行こう思い、店内の中へと入る。

中は小奇麗で広々とした空間がそこにある。

商店街にこんな場所があること自体珍しいような気がしてくる。

いらっしゃいませという静かな声が耳に入ってくる。

カウンターへ歩いていくとショーケースがあり、店の外にある分よりも倍以上の数がある。

「すげえ」

驚くしか出来ず、圧倒されるものばかりだ。

「何をお探しですか?」

「まだ決めてないんですけど」

「そうですか、お決まりでしたらおよび下さい」

ニコリと女子店員が笑顔を作って会釈する。
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