夜獣-Stairway to the clown-
(何にするかな)

夕子はピアスをしたところを見たことがないので却下するとして、指輪も大層すぎるのから却下でいい。

決まることなく、時間だけが刻々と過ぎていく。

決断できず買いたいものが見つからないけど、決めないと店のブラックリストに乗りかねない。

キョロキョロしていると、一つのネックレスに目がいった。

「これ」

「こちらでございますか?」

これとしかいってないんだけど、店員さんは勘違いしたのかそれを取り出す。

取り出したのは、紅い宝石がはまった銀のネックレスだった。

「こちらは人気がありまして、最後の一個になっております」

「そうなんですか?」

「普段なら予約も入っていてもおかしくはないんですけど、お買い上げになるなら今がよろしいかと」

綺麗だと思ったけど、値段どうなのかと見てみると財布の中のお金がぶっ飛ぶ勢いだ。

しかし、普段からお金を使わないので、ここで使ったとしても後悔はしない。

「これで」

「はい。お包みになりますか?」

「お願いします」

包んでもらったものを手に取り、ありがとうございましたという元気のいい声とともに店から出て行く。

後は時間を潰して、夕子に会いに行くだけでいい。

乾に惚れてる夕子は、気持ちをややこしくさせるかもしれない。

出来ることといえばこんなことくらいだ。

気持ちを伝えることもありだが、夕子が考えている幼馴染という一線が思いをとどめる。

考えると前に進みたいが、進めない臆病な自分もいる。

そういう意味では乾に勝ることが出来ないのだろう。

しかし、そんなマイナス思考を巡らしていても、夕子がこちらを向くとは思えない。

今はこれを渡すことだけに専念する。

僕はアクセサリーショップの近くにある喫茶店に入ってくつろぐ。

喫茶店はどこにでもあるような雰囲気をかもし出しておりくつろぎ易い。

可愛らしい制服を着た女の店員が奥の椅子へと案内してくれ、椅子に座るとメニューを机の上へと置いてくれる。

「ご注文お決まりでしたらおよびください」

営業スマイルを一つ残して、奥のほうへと歩いていく。

メニューを見てみるとどこにでもあるような品揃えである。

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