夜獣-Stairway to the clown-
「一緒に帰るところを見たくないっていったらそれくらいしかないと思うけどな。後は変なうわさを立てられたくないぐらいか」

「そんな説明しなくてもいいんだけど、あながちウソでもないかな」

「そうか」

幼馴染である自分の心が無性に寂しい気持ちにもなったが、それは夕子が好きになったんだから特にとやかくいう必要もない。

「見かけだけじゃわかんねえことのほうが多いんだし、話しかけりゃいいんじゃない?」

適当なことをいって、気づいたときには家の前まで来ていた。

夕子は隣の家だったので、別れるのも家の近くまで来てからだ。

「じゃあな」

僕は夕子の顔も見ず挨拶も聞かず家の中へ入り、二階の部屋へと上がっていった。

すぐにかばんを部屋の隅へ放り投げると、ベッドに寝転んだ。

「はあー、初日早々から一目ぼれか」

今まで夕子と幼馴染ということで絡んではいたが、高校入ってそうそうあんなことを聞いてしまうと少し気分も落ち込む。

友達として絡んできたのかと思うところには疑問がつく。

だからといって、好きなんだろうかというところにも疑問がついてしまう。

中途半端だったからこそ、何もいえない自分がいたんだろうと思った。

(夕子が好きになるタイプか。どんな奴なんだろうか?)

物凄く気になってしまって、他のことに頭が回らない自分がいる。

このまま眠れなくなるなんてオチはまずないだろうが、勉強そっちのけになる可能性はあるかもしれない。

そうしていると、コンコンという音がドアの向こう側から聞こえてくる。

「開いてる」

その一言でドアが開く。

ドアの向こう側に立っていたのは、肉親である姉のアキラだった。

アキラとは4つ年が離れており、近くにある大学に通っている。

髪はショートで釣り目という、女からは人気があるような顔つきだ。
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