夜獣-Stairway to the clown-
三人は向こうに遠ざかってるので、三人以外の誰かだ。

後ろを見れば答えは簡単に出てくる。

急いで振り返るとあまり見たくない顔があった。

「乾!」

「クズはどこまでいってもクズだってことが立証できるな」

考えるしぐさをしながら、そこに突っ立ったままだ。

「そんなこといってる暇があったら助けてやってくれよ!」

「大丈夫。やつらに明日はないんだ」

「え?」

乾からさっきの三人組みの方へ向くと警察官たちに取り押さえられている。

「いつの間に」

「おかしな人影が君たちを追っていたのが見えたんでね、警察を呼んでおいた」

「お前、何で都合よくいるんだ?」

「俺もこっちのほうに用事があってね」

僕たちの後をつけていたような感じだが、今は助かってよかった。

(また助けられなかったのか)

自分の弱さが嫌になる。

「助けられないのは仕方ない。だが、君は彼女のために必死に立ち上がろうとしたのは事実だ」

「く」

コイツのことを何も知らない。

何か言われるのは非常に不愉快ではあるが、コイツは夕子を助けてくれた。

どんな手段だろうとも、助けてくれたのは事実だ。

僕は自分が情けないと思える。

夕子が好きだからってコイツは嫌なやつと断定していた。

不愉快だが、コイツなら頭もいいしこういうときの対応もきっちりこなせる。

僕にないすべてがそろっている。

「コウ!」

僕が大丈夫か気になったのかすぐにこちらに走ってくる。

恐怖と心配で少し涙を目にためている。

「お前を守れなくてごめん」

「そんなことないよ!でも、なんで警察官が」

僕からもう一人の人物に目をやる。

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