夜獣-Stairway to the clown-
「もういいよな。夕子を思うのも」

ここが潮時、引き際なんだろうと思う。

女守れない男が傍にいる必要はいない。

弱肉強食、強いものが上に立つのも悪くない。

押しが弱いし粘りもない、気持ちを伝える必要もない。

何もかもが必要ないだらけだ。

どうだっていい、その言葉が何もかも放棄させてくれる。

ある程度の手当てを終わらすと、ベッドの上に横たわる。

「何もする気がおきない」

「何しょげてんの?」

僕の部屋に入ってきているアキラが一人。

「べつにー」

「やる気ないな。何?夕子ちゃんネタ?」

「うるさい。用がないなら出てけよ」

そうはいうものの、出て行く様子はない。

「あーあ、その傷を見ると昨日の二の舞?」

そんなことばかり分かるのか謎ばかりだ。

「もう、駄目だ」

言う気はなかったが口が勝手に声を出す。

「そ」

一言いってアキラは僕のベットの端に座る。

「アンタが諦めるなら、それでいいんじゃない?誰も責めないよ」

「そうか」

「あんた自身の問題なんだし、誰かのためにそれをするわけじゃないしね。それで納得するのなら問題ないと思うさ」

アキラは頭をかきながらそれを伝える。

「あのよ、この前いった夕子が悲しむ可能性があるってなんだったんだ?」

「あれね。もうちょっとあんたが頑張ってたらそんなことも起こるかなって思っただけ」

「そうか」

「でも、そんなこと起こらずに何もかもが終わったね」

「ああ」

「アンタさ、本当に諦めた?」

「まあな」

「あっさり言うね。未練はもうない?」

「ないとはいいがたいが、ないことにしといて」

「そっか。女の子は夕子ちゃんだけじゃないし一途に思い続けるのもいいけど、他も見たら世界が広がると思うけどね」

アキラは立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
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