夜獣-Stairway to the clown-
「飯どうすんの?」

「もうそんな時間か」

時計を見てみればすでに19時を回っていた。

(あー、そんなに深く考えてるつもりはなかったんだけど。僕もすごいな)

「だから、飯どうすんの?一回で答えなよ」

「食べるに決まってる」

「そう。っつうか、そんなしけた面で降りてくるなよ。飯がまずくなるから」

姉はドアを閉めると一階へと降りていった。

(そんな顔していてるのか、俺は)

普段から鏡を見ないのでよくはわからないけど、アキラがそういってるのならそうなのかも。

ベッドに寝てても仕方がないので起き上がり、飯の匂いに誘われるまま一階へと降りていった。

飯を食べ終わると、そそくさと自分の部屋へと戻っていった。

飯中ずっとアキラに見られて食べにくさがあった。

母親や父親は気にせず、TVを見ながら飯を食べていたのは幸いだった。

さっさと風呂に入って寝ようと思い、部屋から出ようとしたときにアキラが部屋のドアを開けた。

僕とアキラは向き合い、対峙している。

「ちょっと部屋に戻りな」

アキラは何か言いたげそうな顔をして僕を部屋に押し戻す。

「何か用か?」

そのまま後ろ歩きをしながら、ベッドへ座る。

アキラは正面、ベッドの前に胡坐を組んで座る。

「さっきから見てたけど、何でそんなシケた面してるの?」

ずっと僕のことを気にしていたようだったが、ついに行動に出てきたようだった。

「何もない」

僕はアキラの顔は見ずに、窓の外にある向こう側の家を眺めていた。

視線の先にあるものに気づいたのか、アキラは口元をニヤりとゆがめていた。

「夕子ちゃん絡みねえ」

(しまった)

自分でも気づかないうちに迂闊なことをしていたようだ。

向こうを見ていたら、さすがに誰でも気づくようなものだろう。

「顔に出るなんて若い。感情豊かってところかな」

「うるせえ」
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