夜獣-Stairway to the clown-
「今日の空も眩しいですね」

「迂闊に見上げたら目がやられそうだな」

「それでも素敵です。他が変わっても空だけは変わらないです」

五百年経っても納得してしまう。

「いろんな雲が流れてるのを見てるうちに、時間を感じられるのです」

雲が時計代わりなのも変わっている。

「あれが止まっているならば、私は気が狂うかもしれません」

そんなに大切な役目があるのを聞いたのも初めてだ。

「それがないからこそ今私はここに立っていられるんです」

「そうか」

死にたくないって思うけど、長く生きたいとも思えない自分がいた。

死に行く自分を考えたくはないが、そんなことを言われるとチラリと頭をかすめる。

「お姉さんは元気ですか?」

「いつもケロっとしてるよ」

「よかったです。治らなければ戸惑いしか起きませんでした」

「そう思いながらも治る確信があったんだろ?」

「意味のないことをして痛い思いはしたくないです」

「血族でも痛みはあるのか」

「あなたもさっき痛がってたじゃないですか」

「そういえばそうか」

いつの間にか血族の話になってしまっている。

なぜこんな話になってしまっているのか不思議だ。

やらないと思っても自然とそちらに向かっている。

「そういえば、傷跡ないよな」

あの日の次の日に腕には傷跡がなかった。

「回復させる能力を使える人もいます」

「それはすごいな。医者もびっくりだぜ」

「医者ではないんです」

「何でならないんだ?」

「彼は本当の意味で人を治すことには向かないだからだと思います」

「使える能力を活用したほうが世の中のためだと思うんだけどな」

「世界は簡単に能力を使えるような環境ではないのです」

「そっか」
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