夜獣-Stairway to the clown-
能力といっても、他人にばれてはいいように使われるだけだ。

決していいことばかりじゃない。

人間でいられる方法は能力は使わないでいるのが当然か。

「能力があるから暴走なんてことはないよな」

「疲労して死ぬことはありますが、精神的に異常をきたしたり能力が一人歩きしてその人を乗っ取ったりなんて非常識なことはないです」

能力がある時点で非常識だなんてことは口が裂けても言えはしなかった。

「能力なんてないほうがいいのかもな」

「使うことなど滅多にないですから、ないに越したことはないです」

「そうか」

自分にもし能力が開花したらどうなるのか。

やっぱり、すごい能力が潜んでいるのか。

それとも雪坂みたいに地味な能力なのだろうか。

「血族が能力を使うにはきっかけが必要ですから、簡単に開花することもありませんけどね」

「それならまず開花することはないな」

「ふふ、それならいいんです」

昼休みのチャイムがなり、雪坂と教室へと戻っていった。


今日の授業も変わりなく終わり、帰る準備をする。

雪坂も帰ろうとしているところだった。

今日もリムジンで帰るんだろうか。

今まで一回も帰りを誘ったことはない。

誰かと一緒に帰ってるところも見たことはない。

一度は誘ってみてもいいかもしれないと思い、雪坂に聞いてみる。

「今日もリムジンか?」

「そうです」

「たまには歩いたほうがいいんじゃないか?」

「健康には良さそうです」

「そうそう。歩くって頭の運動にもなっていいって話だ」

「ふふ、何だか熱心です」

「こんなことには熱くならないとやってられないんでな」

「では、たまには歩いて帰ります」

「お、ノリがいいね。僕も付き添うよ」

雪坂は目をパチクリさせて動きが止まったけど、すぐ笑顔になる。
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