夜獣-Stairway to the clown-
待っている間、やることはない。

そこらへんを歩いたり、茜色の空を見上げたりとのんびりした時間をすごしていた。

十分程度が経ち、遠くから車の音が聞こえてくる。

見覚えのある黒いリムジンが数秒で僕の前でゆっくりと止まる。

誰も触ることなく車のドアが開く。

中へ入れといいう合図だろう。

引き込まれるように車の中へと入る。

中は広く普通の車とは違うつくりであり、TVとかでよく見るような形である。

視線を奥に移すと私服姿の雪坂が座っていた。

「着替えてこの時間か、早いな」

「そこまで身なりを整えてきてません」

僕だという事で油断してるのか、そこまで気にするような奴じゃないと思われているのか。

「広いな」

「必要がない広さでありますけど、ジュースなど保存するのには便利です」

近くにある冷蔵庫らしきところから缶ジュースを取り出す。

「飲みます?」

「いただくよ」

歩いてきたところでのどが渇いていた。

缶ジュースを手に取ると同時に車がそこから発進していた。

動き出すと安全運転なのか、車の性能の良さなのか、安定性があり揺れがほとんど感じられない。

「私を誘った理由は何でしょうか?」

「え?」

「いつも一人でお帰りになっていたのに、急に誘うなど何かあったのですか?」

聞いてこられたのでどう答えようと迷うが、すぐさま答えが出てくる

「ちょっとした心変わりかな」

「自分が変わる出来事はあまりないですから、いい方向に変わったのなら素敵です」

「他にも雪坂に興味が沸いたってのもある」

「私に?」

「雪坂の話聞いてると色んなことを知られるし話も面白いし、もうちょっとお前を知ってみたいと思ったんだ」

「血族の話以外、大したことを伝えることは出来ないと思います」

「些細なことでも知りたいっていうのが探究心って奴だよ」

「何を聞きたいのでしょう?」

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