夜獣-Stairway to the clown-
気づけば昼休みになっていた。

授業を受けていたのかというほど早かった。

ノートを見ればちゃんと黒板を写した筆跡があったので、受けていることは確かだ。

いつも通りに飯を食べる。

荒川だけではなく、この半年間で知り合った奴も混じって食べることになった。

必要ということではなかったのでその時のことはあまり記憶には残っていない。

ただ、最近雪坂と仲がいいということをちゃかされたぐらいだ。

飯を食べ終わると、サッカーに誘われたけど約束があったのでそっちは断っておく。

雪坂がいる場所へ向かうことにした。

裏庭に到着すると、木の根元で雪坂が立っている

いつもなら樹の上にいるんだけど、今日は僕の話だということで改まっているのだろうか。

「やあ」

「こんにちわ」

笑顔であるが、どこか真剣な雰囲気がこの場を漂っている。

「さっそくなんだけど、今朝のニュース見た?」

「ええ」

「お前は何か感じることはなかった?」

「何をですか?」

「とぼけてるのか?」

「そのようなことは決してございません」

「お前はわかってるんだろ?誰がやったかなんてことをな」

「血族と断定しているのですか?」

「それしかいいようがないだろ。あんなの人間が出来ることじゃない」

人間の仕業だとすれば、戦争がもっと残酷になっていたに違いない。

雪坂は少し考える素振りを見せてこちらを見る。

「否定はしませんが、肯定も出来ません」

「何でだ?」

「はっきりとした証拠がないからです」

「それはそうだが」

「私は力の乱用をするものが現れてほしいとは思ってはいません。血族なら尚更の話です」

「信じたくないってことか」

「はっきりいうのならばそうです」

「分かったよ。雪坂は何もしなくていい」

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