夜獣-Stairway to the clown-
「探すおつもりですか?」

「まあね」

「そこまで拘る必要があるのでしょうか?」

「正義感なんて陳腐なもんを掲げるつもりはないけど、どんな奴か気になるだけだ」

「本当ですか?」

「オフコース」

「見つけて危害を加えられることになったら対処できますか?」

「出来る限り抵抗してなんらかの手段には講じる」

「そうですか」

少し暗い顔つきになりながあ、うつむいていた。

「大丈夫とは言いがたいけど、死なない自信はある。死にたくないしな」

「信じがたいです」

「言ってる僕も大丈夫かなって思えるだ」

「無茶だけはしないでください」

会話をしている内に一つ気になっていたことがあった。

「お前は見に来ない方向?」

「何もしなくていいといったのはあなたですが?」

「買い言葉に売り言葉ってやつで、ちょっとした勢いだよ」

「左様ですか」

暗い顔から呆れたような目線がこちらを刺していた。

「出来るならお前についてきてほしい。お前なら対処が出来ると思う」

「神崎さんって頼りないですね」

「痛いことを言うなよ」

雪坂のいう事はもっともであり否定できなかった。

「お前に怪我はさせない」

これだけは本心からの言葉であり嘘はない。

「ふふ、頼りにしてますよ」

すぐさまぱっとした笑顔になり、手を使わずに足だけで樹を上っていく。

ものすごく運動神経がいいんじゃないかと思う。

「今日の雲もいろんな形が存在します」

「人間の一人一人と同じくらいに同じなものはなさそうだ」

「人は何もかもが違います、血族もそうです」

ひゅうっと風が吹くと、髪が自然と風のほうへと流されていく。

雪坂の表情からは何を考えているのか読み取ることが出来なかった。
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