夜獣-Stairway to the clown-
「準備がいいね」

「ふふ、何事も備えあれば憂いなしといいます」

僕たちは雪坂のリムジンがある場所まで歩いていく。

「私はここで失礼させてもらいますね」

「ああ」

自然にリムジンのドアが開き雪坂は中へと入っていく。

僕が立ち去ろうとすると、リムジンの窓が開く。

「どうしたの?」

「忠告というか注意を促しておきたいんです」

「何の?」

今更と思いながらも、雪坂のいう事は聞いておこうと思う。

「私と一緒にいて犯人を見つけたとしても、誰であろうと一人で突っ走っていくのはやめてください」

笑顔だった顔が少し曇っていることに気づく。

「分かったよ。落ち着いて行動すればいいんだろう」

そのあまり見ない気弱そうな顔にはさすがにイヤとはいえそうにない。

「アナタが物分りのいい人で助かります。では、失礼します」

ニコリと笑みを浮かべ、勝手に窓が閉まるとそのまま走り去って行った。

一人残った僕はここにいても何もすることはなかったので家へと帰る。

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