死神彼氏と五日間
「顔色が優れないが、平気か?」
ソウシは心配するおもむきで真奈の顔を覗き込んだ。
一方、当の真奈はというと……
「ち、ちちちちち近いですっ!」
頬を赤くしていた。
やはりまだ男が近づくのは慣れないらしい。
「『ち』が多いな」
ソウシは真奈の様子を微笑ましい様子で眺めていた。
そして、それと…、と付け足す。
「もう一度言うが、俺は他人には見えていない。よって、お前は全て独り言を言っているように見えるからな、注意しろよ?」
はっと気付いて真奈は辺りを見渡した。
幸い、人は少なかった。
しかし、熱い視線を向けられているのに気付いて、真奈はそっと斜め後ろを見た。
そこには、杖を持った女性のお年寄りがいた。
――――…ひぁぁぁ。
みるみる頬が火照るのがわかった。
その女性は『若い子は元気でいいねぇ』と言わんばかりの微笑みだった。
―――――…は、早く降りたいよ。
恥ずかしすぎて下を向くと、頭上からクスクスと笑う声が聞こえた。