初体験
すると耀ちゃんは自分の財布から1万円札を2枚あたしに差し出した。
「え、なにこれ。」
なんとなく、耀ちゃんのしたことの意味は分かる。
だけどわざと聞いてみた。
「電車賃。」
明らかに電車賃にしては金額が高い。
だけど、あたしは少し大人になったつもりで受けとった。
「耀ちゃん、ありがとう。」
「・・・ああ。」
「じゃあね。」
あたしはドアノブを回して扉を開けた。
「真奈!・・・ごめんな。」
前を向いたまま、あたしは、振り返らずにそのまま玄関をでた。
バタン
扉が閉まると、堪えていた涙が溢れて嗚咽が漏れた。
泣いても泣いても止まらなかった。
耀ちゃんから受けとった1万円札2枚をくしゃくしゃに握り締めて、ただただ泣き続けた。