Frist time



―――やっぱりいるのか。



宏の答えを聞いた俺が思ったのはこれと、意外にも素直に話すんだなってことだった。
今まで宏とそういう話していなかったからというのもあるが、宏と一緒にいて割と秘密主義ということを感じていたからだ。自分のことを話さないというか、いつも聞き手になることが多くて、内面のことを話してくれるのはかなり稀だ。
だからそんなに素直に答えるとは思ってもみなかった。

俺だけが別の意味で驚いている中で、この話は更にヒートアップしてくる。


「まじでっ!?どんな子どんな子?
写メとかないのか?」


周りの奴らが宏の返答に食い付き、そう尋ねると、宏は嫌な顔一つしないで、


「あるよ。
でも俺も写ってるやつだけどいいか?」


と答えた。
その言葉に俺はさらに驚いた。顔を見せることも躊躇しないなんて。
正直、俺だったら絶対に他のやつらに見せるなんてさらし者になることが見えている展開に乗っからない。
秘密主義の宏がここまでするなんて、よっぽど好きなのかもしれない。


俺以外のやつらはその言葉をきっかけに、どんどん宏の周りに集まってきて写メを見始めた。


「うおー!めっちゃ可愛いじゃんっ」


「やばいなーお前らかなりお似合いだしっ」


「えー宏くん彼女いるんだってー。ショック―」


なんて言葉がたくさん飛び交う中、ワンテンポ遅れて俺も平然を装って写メを見た。

そこには幸せそうに笑う2人がいた。写真の2人は付き合いたてなのかなんだか初々しくて。でもお互いのことが大事だっていうのがすごく伝わってきた。



「・・・仲いいんだな。」


このとき俺は、なんだか少し、宏を遠く感じた。



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