Frist time
カップルが逃げていった後、二人で拳を合わせる。
今はかなり清々しい気分だ。
教室に戻り、ベランダに通じる扉を少し開けて、窓際の宏の席に座る。
冬の風が冷たいが、今の俺たちの上がりきった気分を下げるには丁度良かった。
二人で向かい合い、頬杖をつきながら、徐々に冷静になってきた頭で話し出す。
「…さっきのは八つ当たりだな」
いきなりの俺の発言に、宏が目を丸くする。
「翔、なんかあったのか?」
独特の落ち着いた、優しい声で尋ねてくる。
面白半分に問い詰めたりしない、ここも宏の良いところだな。