Frist time
「・・・宏、悪かったよ。1番辛いの、お前なのに、ちょっと受け入れられなくて。
でも、どうしてだよ?」
俺はなんとか自分を落ち着かせて、宏の様子を伺いながらそう尋ねた。
宏も気持ちを落ち着かせようとしているのが伝わってきた。
本当、なんだな。こんな宏を見るのは初めてだ。まだ1か月の付き合いとはいえ、かなり仲が良くなっていたから、いろんな面を見てきたつもりだったのに。
「いや、俺こそごめんな?急にこんなこと言ってさ。
なんかさ、父さんの会社で他の県に新しい支店を作るんだって。その支店長に父さんが任命されたらしくってさ、だから移らなきゃいけないらしい。」
そう言ってふうと息を吐いた横顔はすごく寂しそうで、何より納得していないのがすごく伝わってきた。
「・・・そういうことか。
引っ越すとしたら、いつ頃なんの?」
「んー・・・まだ詳しく決まってないみたいだけど、支店が完成次第らしいよ。
引っ越しが決まってるってなると、ちょっとみんなと騒いでる時もふと悲しくなってさ。ちょっと、翔には言っておきたかったんだ。」
そう言って宏はうつ向いた。支店がいつ完成するか俺達には分からなかったけど、きっとそんなに遅い話じゃないと思う。それだけはなんとなく分かる。
これからも楽しくやれるとか思ってたけど、もう、無理なんだな。子どもっていうのはこういう時が辛い。まだ親がいないと何もできない年だから。
そういえば。
「・・・このことは彼女さんも知ってるのか?」