Frist time


俺の言葉を聞いた宏は急にその場にしゃがみこんで、顔を両手で覆った。


「それなんだよなあ。実はまだ言えてなくて。時期もはっきりしないしさ・・・
それに、彼女、家のことでいろいろ悩んでて。このこと言ってさらに悩ませたくないんだよね。
・・・ほんと、どーしたらいいんだろうな。」



俺は彼女が居たこともあったけどここまで思い入れてなかったから正直気持ちが分からなくて。なんて声をかけたらいいかわかんなかった。

しばらく沈黙が続くと宏は勢いよく立ち上がり、悲しい笑顔を俺に見せた。


「つーかごめんな?こんな重い話で。
でも、聞いてもらってちょっとスッキリしたわ。てかお互い部活の時間やばいし、行こっか。」



時計を見てみると結構やばい時間で。思わずうわっと声が出る。
2人で急いで準備をしながら、


「・・・なんかあったらいつでも言えよ?」


出てきたのはこんなありきたりな言葉。でも、俺にはこう言うのが精一杯だった。
それなのに宏は、こんな俺の肩を叩いて、


「うん、ほんとありがとな。
じゃあまた明日。」


そう言って机の上に置いていたカバンを掴んで廊下をかけていった。
宏がいなくなった机を眺めていると酷い焦燥感に襲われた。俺でもこうなんだから、宏はもっと辛いだろうな。




今日の部活は言うまでもなく散々な結果だった。



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