Frist time
「いや、ちょっと待てよ。俺、昨日見たぞ。2人で会ってたじゃんか。
・・・仲良さそうだったし。」
「あー見られてたか。お前に見られるとか、はずいわ。」
そう言ってケラケラと笑う宏。
「今、そういう冗談いらねんだけど?」
俺が横目でギロリと宏を流し見ると、茶化したことを悪いと思ったんだろう。宏が申し訳なさそうに顔を歪めた。
「わり。そんなつもりじゃなかったんだけどさ。」
「どうして、そう思ったんだよ?」
昨日軽く見た限り、2人は本当に大切に思い合っているって感じで。宏と会った瞬間彼女の表情がすごく明るく、かわいらしい笑顔がこぼれてたし、遠目で見ても宏も大事そうに見てるのが分かった。
そんなにお互い好き合ってるのに、なんで別れるなんて選択するんだよ。
なんでか分からないけど、俺の中で宏に対してイライラした気持ちが募っていってた。
だけど、そんな俺とは正反対に宏は落ち着いていて、
「今ならまだお互いに間に合うと思うんだ。付き合って期間は短いからさ。
梨華には、あー彼女梨華って名前なんだけど、離れて辛い思いをさせるよりも、笑顔でいてほしいなって思ってさ。
あいつは離れたら絶対、耐えられないと思うんだ。
それに、今みたいに彼女が出来て喜んでる亮とか、学校でいちゃついてる人たちもいるだろ?
俺は今、そういうのを見てるだけでも辛い。
だから、自分のためでもあるんだけどな。」
そう言って宏は弱々しく微笑んだ。