Frist time
俺たちは駅前だと目立つので、駅裏のベンチで話すことにした。ここなら少なくともうちの学校から駅に向かってくる人に会わなくて済む。
「で、相談ってのは?」
「察してるとは思うけど、宏のことなの。
翔くんのことは宏からもさきからも聞いていて、特に宏はすごく親しそうだったから。
宏が最近何か悩んでるみたいで。聞いても答えてくれないし、なんだか私と居るのも辛そうで。翔くんなら何か聞いてるかなって。」
梨華ちゃんの話によると、宏からよく高校で仲のいいやつがいると俺の名前があがるらしい。そして最近、さきちゃんが亮と付き合ったことで亮が俺と友達だということを知り、さきちゃんに頼んでセッティングしてもらったらしい。
まあそれはいいとして、宏のことね。梨華ちゃんの様子だと、まだ言ってはいないみたいだよな。
知ってるけど、さすがにこればっかりは言えない。せっかく宏が話してくれたし、宏が話してもいないのに第3者の俺が軽々しく話していい内容でもない。だとすれば、
「いや、悪い。俺も何も聞いてないんだよな。」
頑張って誤魔化すしかない。
俺の返答を聞いて梨華ちゃんは明らかに肩を落とした。それはそうだろう、俺はきっと頼みの綱だったのだ。
「そっかあ。翔くんにも言ってないなら、言ってくれるの待つしかないのかもね。」
そう言って悲しそうに笑う梨華ちゃんを見ていたらなんだかこみ上げてくるものがあって。
本当に宏のことが好きなんだなっていうのも伝わってきて。よくわかんないけど、羨ましいなって思った。