Frist time



「お待たせ。ごめんね、電車少し遅延しちゃって。」


「いや、平気。また裏行くか。」


週末の日曜日、お互いの部活が午前中で終わりということで、その後会う約束を取り付けて今日に至る。
梨華ちゃんも部活後ということでお互いジャージだ。意外なことに、梨華ちゃんは陸上部に所属していた。それでそんなに肌が白いなんて、信じられない。梨華ちゃんの高校は女子高ということもあり、デザインが女の子らしい、黒字にピンクの刺繍が入ったジャージだった。色白の彼女にはとてもよく似合っていた。


座っていきなり本題に入るのも気が引けたから、お互いの部活について話していた。
梨華ちゃんの高校はかなり陸上が強いところらしく、県大会団体優勝はもちろん、個人やリレーで全国を狙っているんだとか。


「部活後だし、喉渇いたな。なんか買ってくるから待ってて。」


「あ、ありがとう!」


俺は適当に自販機で買って、梨華ちゃんの元に戻った。


「はい。」


・・・ん?反応が、ない?

梨華ちゃんが微動だにしなくなったので、梨華ちゃんの顔を覗き込むと、


泣いていた。



「え、ごめん、俺何かした!?」


いきなりのことに焦っておろおろとうろたえる俺。だってこんなこと初めてで。まじでどうしよう。よく女の子泣かすのは最低みたいなこと聞くし。俺最低な奴だった?

頭の中で慌ただしくしていると、梨華ちゃんがぽつりと口を開いた。


「違う。翔くんのせいじゃないから。」


その一言を聞いただけでほっとして、うろたえた時に思わず浮いていた腰もストンと下した。





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